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新しいリアリティの追求「人喰いの大鷲トリコ」

こんにちは.ぷしこです.

初エントリです.

 

初めてのエントリでは12月6日発売のテレビゲーム「人喰いの大鷲トリコ」について思ったこと・感じたことを書いていこうと思います.

 

まだプレイされてない方向けにネタバレなしで書いていますが,一度プレイしてから読んでいただいて,「あーなるほどね」とか「そーいうことね」って思いながら読んでもらうのが一番面白いかと思います.

 

概要

本作は「ICO」「ワンダと巨像」で一躍トップクリエイターとなった上田文人氏によるアクションアドベンチャーゲームです.

見覚えのない洞で目覚めた主人公の少年は村で人喰いの大鷲として恐れられている巨大な生物「トリコ」とともに力を合わせて古代遺跡がそびえたつ渓谷からの脱出を試みます.


『人喰いの大鷲トリコ』 ストーリートレーラー

 

物語の主題

ファイナルファンタジーなどのRPGでは主人公の成長はわかりやすくレベルという数値で表されますが,アクションアドベンチャーというジャンルでは専らこのレベルという概念が存在しません.

しかし主人公の成長物語を描く作品が多い中,主人公が一貫して同じ技ばかり使うアクションゲームなんて,いくらイベントシーンで心の成長を描いても実態としての主人公の成長がないのでプレイヤーとしてはどうも感情移入しづらく,またプレイが単調になります.なので「デビルメイクライ」シリーズをはじめとするアクションアドベンチャーゲームではレベルで制御するのではなく,物語の流れの中で主人公が特殊能力を身に着けて行くことで敵と戦える技を手に入れたり移動できる場所が増えたりします.

前置きが長くなりましたが,ではトリコの場合はというと,主人公の少年ができることは初めから終わりまで一貫して

  • 移動する
  • つかむ
  • ジャンプする
  • トリコに指示を出す
  • トリコを撫でる

のみです.これではプレイが単調になってしまわないか?と思うのですが,実はこのタイトルでは少年自身ではなく,「トリコと少年との絆」が成長し変化します.

古代遺跡の仕掛けや身長の何十倍もある高い壁を協力して乗り越えて先へと進むうちに少年とトリコの間には絆が芽生え,成長します.絆が成長するとトリコが少年の出す指示の意味を理解するようになります.

このようにこの物語の全体を通して描きたいのは「主人公の心の強さ」や「トリコの生き物としてのリアリティ」ではなく「一人と一匹の絆の成長」であることがうかがえます.

徹底されたリアリティ

アーティスティックでリアリスティック.極めてリアルなファンタジー.

リアルな絆をゲームで表現する

記事の上のほうに公式の動画を貼りましたが,大鷲は徹底してリアルな生物であるかのように描かれます.トリコの動作はまさにそれで,ペット(特に犬)を飼ってる方なら特に共感できると思います.

このモーションはAIによって制御されていますが,このAIがまた秀逸で「人の言葉の通じない者へ意思を伝達することの難しさ・もどかしさ」をとても自然に描き出しています.

少年を通じてプレイヤーはトリコに「あっちに行って」「ジャンプして」「これ壊して」などの支持を出すことができますが,それを実行するのもトリコ次第.時には指示がうまく伝わらなくてもどかしい思いをすることもあります.ハッとするとゲームをプレイしてるのに「気持ちが伝わらなくて寂しい」そんな気持ちになっているのです.

いわゆるRPGでは主人公の強さを表す攻撃力などのパラメータは数値で表されます.数値で表示されれば主人公がどの程度成長してるのかという指標として非常にわかりやすいのですが,リアリティを欠いているのは確実です.現実の世界では自分の強さなんて数値で算出されるものではありませんから.

 

一方トリコでは少年と大鷲との絆はパラメータでは表示されません.そもそも絆のパラメータが存在しているのかもわかりません.ただ,プレイしてるうちになんとなく絆が深まっていく気がするのです.つまり少年とトリコ,もといプレイヤーとトリコの絆はその存在を実感として認識していくのです.すると困難な局面に差し掛かった時に自然と「トリコ危ない!」とか「トリコ助けてー」とか思ったりするわけです.

このプレイヤーの感情をうまく操る工夫とゲームロジックが密接に融合したゲームシステムは上田文人氏の手腕によるものでしょう.いやーあっぱれです.

(ここから数行蛇足です)

一般的なRPGやアクションゲームでこの「あえてすべてのパラメータを見せない」手法を取ればまあ批判の的になること請け合いなので,一般には通用しないテクニックではあります.ファイナルファンタジー15のように違う部分でリアル貫いてるタイトルもあるので,要は最適解はタイトルごとに全く違いますよ,ということです.

美しくリアリティのあるグラフィックス

本作のリアリティを代表する要素としてレベルデザインが挙げられます(ここでのレベルは前述のような数値のレベルではなくステージや謎解きの構成やアイテムの配置などのことを言います).本タイトルをプレイしていると同じ景色に全く遭遇しないことに驚かされます.もちろん,舞台は一貫して大鷲の谷と呼ばれる渓谷なので景観のコンセプトは統一してるのですが,プレイしていて”既視感”を感じる場面がまったくと言っていいほどないのです.ゲームというのは製作の過程でコスト削減のために3Dモデルやテクスチャ画像などを使いまわすことが当たり前で,そのせいで初めて見る景色であっても既視感を持つことも多々あります.使いまわしを意識してしまうと大きく没入感がそがれます.

トリコに関してもやはり使いまわしはありますが,似た特徴を持った部屋・地形がないためプレイヤーは使いまわしを意識することがないのです.

 

影の表現も本作のリアリティを語るうえで外せません.本作ではトリコの羽根のひとつひとつやツタの葉一枚一枚に至るまで,すべてのオブジェクトに複雑で解像度の高い影が落ちるようになっています.舞台である渓谷では常に強風が吹くため,木の枝やトリコの羽根,少年の衣服などの揺れ物は常に動いており,それが揺れる下草に複雑な影を落とすため,キャラクターが動いてなくても画面全体は常に風景が変化し,じーっと見ていて飽きません.

 

総評として

ゲーム自体の難易度は特別難しいというわけではなく,じっくり考えながらやる必要がある,といった感じでとてもちょうどよい塩梅の難易度となっています.「ちょっとゲームから離れてた大人」向けの難易度というのが適切でしょうか.

もちろん初めてゲームをするって方でも十分に楽しめるし没頭できる,とてもカジュアルな分類のゲームだとは思います.ただ,「多くを説明しない世界観」「敵をなぎ倒す爽快感は皆無」という,大衆向けとは対極にある要素も持ち合わせているのが本作です.「小説の世界にじっくり浸ってみたい」「世界の片隅に取り残されてみたい」なんて思ってる社会につかれた現代人のみなさんには大変オススメできるタイトルです.

クリアまでなら要する時間もそこまで長くはないので,ゲームに一切触れたことがなくても操作がシンプルなので10時間あればクリアすることはできると思います.

春休みで何もすることがないとかそんな人にはうってつけではないでしょうか?

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記事を読んでタイトルが気になった方はぜひご自身でご購入されて,遊んでみてください.

 ↑言わずと知れた上田文人氏の出世作.そのHDリマスター版です.

トリコはPS4で遊べますがこれはPS3版になっております.トリコも発表された当時はPS3でリリースされる予定でしたが開発が長引いたことと技術的な側面で大きな課題に直面したことを理由としてPS4での発売となりましたよ,といったことを何かで目にしたような気がします.このHDリマスター版はちょうどPS3で発表されたころに発売されたものです.大変評価は高く,PS2オリジナル版でも遊んだ友人Kは「はじめてやるならPS3版のほうがいいよ」と言っていました.そりゃそうだ.

これにて初エントリは終了になります.初めてのレビューで文体もまばら,画像はなし.イマイチ,タイトルの魅力を伝えられた気がしないのですが,少しでもこのタイトルに興味を持っていただけたら幸いです.

あんまり長い時間かけて書いてもよい文章はできませんね.これでも本文は2回くらい書き直してるんですが...(汗)